概要 |
微細形態の評価に用いられる走査電子顕微鏡(以下SEM)は、現在、様々な分野の研究や開発において欠かすことのできない重要なツールになっています。その中でも低真空SEMは、絶縁物試料や水分・油分を含んだ試料を無処理で観察することが可能なことから、生物分野や食品関連、電子部品の品質管理などへ幅広く利用されています。 低真空モードの観察にはこれまで主に反射電子情報を用いましたが、低真空二次電子検出器(ESED: Environmental Secondary Electron Detector)の製品化により二次電子情報を得ることも可能になりました(オプション)。低真空二次電子像は試料表面の形態情報を有することから、組成や内部情報をもつ反射電子像と比較して、より最表面を高倍率で観察することができます。今回は日立ナチュラルSEMの利点を生かした各種機能性フィルムの観察例を紹介します。 観察に用いた機能性フィルムは、私たちの生活の中で農業用品から食品包装、生活用品、電子部品材料まで様々な形で使われています。これらのフィルムは基材の樹脂中に微細粉末をブレンドさせたり、多層構造を形成することで、発光や難燃、防曇など機能を持たせています。 一般に樹脂の観察では導電性を持たせるため金属蒸着が必要ですが、その際の熱の影響により試料変形を生じるなどの問題があります。ここに示すナチュラルSEMの観察例ではアーティファクトの生成を避けるため前処理を行うことなく直接観察を行いました。
キーワード:ナチュラルSEM,機能性フィルム,低真空二次電子検出器(ESED)、低真空二次電子像,低真空反射電子像 |