概要 |
低真空SEMにクールステージを装着した「チルドSEM」は、従来の化学固定プロセス(固定・乾燥・蒸着など)を省略して含水試料を生に近い状態で長時間観察することを可能にし、様々な分野で効果的な結果をもたらしています。 今回着目した親水性樹脂(ソフトコンタクトレンズ)は、従来の化学固定法では変形が避けられなかった試料の一つです。ソフトコンタクトレンズ表面の真菌による汚染については、1973年にBernsteinによる報告以来、付着防止と除去に多大な努力が払われてきました。しかし、レンズに付着した真菌の完全除去および付着防止は困難であり、その上角膜真菌症は難治性の疾患であることから、真菌汚染は眼科医にとって重大関心事です。さらに、真菌汚染は高分子ポリマー自体を腐食・劣化させることも知られています。ここでは、角膜真菌症の原因菌として知られている三種類の培養真菌をレンズ表面に接種し、増殖状態をチルドSEMを用いて一切の前処理を行わずに直接観察したので報告します。
キーワード:チルドSEM,親水性樹脂,ソフトコンタクトレンズ,培養真菌,アスペルギルス・フミガーツス,黒色アスペルギルス,黄色アスペルギルス,菌糸,分生子,胞子 |