概要 |
Natural SEMは、試料室圧力を通常のSEMより高くして1~270Paの範囲で観察することができるSEMであり、試料から発生した反射電子を検出して像形成を行っています。低真空観察の特長としては、①帯電現象による像障害を大幅に軽減できるため、絶縁物でも蒸着せずに直接観察や分析が可能なこと②生物試料など水や油を含んだ試料を前処理を省略して迅速に直接観察できることがあげられます。さらに-10℃まで冷却可能なクールステージを用いて含水試料を観察することにより、水分の蒸発を軽減して生に近い状態で長時間観察することを可能にしています。一方、低真空観察時の改善すべき点としては、試料室内の圧力が高くなるにつれて残留ガスとの衝突による入射電子や反射電子の散乱が激しくなるため、高真空観察時に比べ像のS/Nや分解能の低下が生じることがあげられます。 そこで今回は、反射電子検出器の改良を行い、低真空中での入射電子や反射電子の飛程距離を短縮することによって、低真空観察時のS/Nおよび分解能の向上を試みたので、応用例も併せて紹介します。
キーワード:Natural SEM,入射電子,反射電子,飛程距離,S/N,分解能,改良形反射電子検出器,クールステージ |