概要 |
クールステージを装着した低真空SEM(以下チルドSEM)は、水分の蒸発や電子線損傷を軽減し、従来の前処理(固定・脱水・乾燥・蒸着など)を省略あるいは簡略化して含水試料を収縮・変形の少ない状態で長時間観察することを可能にしました。さらに最近では、反射電子検出器の感度向上により、低真空状態においても低加速電圧で、より高倍率の観察が可能となったことから、微生物学の分野での利用が期待されています。 そこで今回は生野菜に付着する細菌に着目し、YAG反射電子検出器を用いて観察を試みました。野菜は収穫の時点で少なからず微生物の汚染を受けています。そのため、食品メーカーではサラダや調理パンなど生野菜を含む食品に対して、その微生物学基準(都道府県の指導基準では、検体1gにつき、生菌数が1×10(5)~5×10(5)以下)をクリアするために、多大な努力が払われています。生野菜の洗浄には、現在、次亜塩素酸ナトリウム溶液(遊離残留塩素100ppm以上)が主に使用されていますが、必ずしも満足できる結果は得られていません。 そこで本報告では生野菜の洗浄方法として、速効性の殺菌作用を示す水として脚光を浴びている強酸性電解水、および殺菌効果の確認されているフマル酸を主成分とするフマル酸製剤を用いて生野菜に付着する細菌の洗浄を行い、洗浄効果の可視化を試みたので紹介します。
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